ギャンブル依存症の原因・発症の要因

ギャンブル依存症の原因・発症の要因

ギャンブル依存症

ギャンブル依存症の診断名は「病的(びょうてき)賭博(とばく)」と呼びます。経済的・社会的・精神的な不都合(問題)が生ずるにもかかわらず、ギャンブル(パチンコ・スロット・競馬・競輪・競艇など)を止めることができない状態を言います。ギャンブルというプロセスにはまり、自分ではコントロールできない状態に陥り、消費者金融、サラ金、ヤミ金などからの借金、失職、家族不和、うつなどの弊害を伴うことが多くあります。なお、ここ数年では投資やFXが仕事や趣味の範囲を超えてギャンブル感覚になってしまう、気軽に始めたオンラインカジノにのめりこんでしまうといった事例も増えています。

ギャンブル依存症には次のような特徴があります。

サラ金などから借金を繰り返しますので、ダイレクトメールや明細書・請求書などが多数出てきます。競馬は携帯電話で買えますので、携帯電話を手放さなくなったりします。ギャンブルの攻略本を読むようになり、朝からパチンコ店に出かけて開店前の列に並ぶようになります。

当院は通院専門のクリニックですので、家事、仕事を続けながらギャンブル依存症の治療に取り組めます。夜間診療も火・水・木にやっており、夜間のみでも治療ができます。また重症の場合は日中夜間を通した治療が必要になりますが、その際はクリニックの近くに当院のグループホーム(回復施設)がありますので、そこからの通院であれば安心・安全な治療環境を提供できます。また入院が必要な場合には専門病院と充分な連携があります。当院では患者様のご都合に合わせて治療方法を選択できるように、ギャンブル依存症の治療コースをご用意しております。主治医と相談してご自身に合った方法で治療を開始していただけます。

なお、「自分がまた借金をしてしまうのでは…」と不安な方には物理的にお金を借りられない環境にすることをお勧めします。

① ギャンブル依存症に陥る脳のメカニズム

ギャンブル依存症とは、経済的・社会的・精神的な不都合(問題)が生ずるにもかかわらず、ギャンブル(パチンコ・スロット・競馬・競輪・競艇など)を止めることができない状態を言います。「やってはいけないとわかってはいるんだけどやめられない」というコントロール不能の状態に陥ります。このような人に対し、かつては意志の弱さや倫理観の低さのせいであると思われがちで、精神的な病気であるという認識はほとんどありませんでした。しかし実際には脳の仕組みそのものが変化してしまっているのであり、条件さえ揃えば生まれや育ち関係なく誰でもなりうる病気なのです。

ではギャンブル依存症になるまでにはどのような経過を辿るのでしょうか。 どのような依存症も、始まりはちょっとしたきっかけです。ギャンブルは日常生活において当たり前に存在するものであるため、きっかけとなる場面はたくさんあります(電車の広告、職場の人からの誘い、深夜のバラエティ番組など)。後にギャンブル依存症になる方も最初は遊びの範囲でギャンブルをしています。しかしある程度の期間繰り返しギャンブルを続けるうちに、頻度やかけ金が増えていき、それに伴い何らかの問題(対人的・経済的・身体的・精神的な問題)が生じます。健全なギャンブラーであればこの時点でギャンブル行為を控えることができますが、一部の人はそれができずにお金をおろしに行ってまでギャンブルを継続します。この一部の人の脳にはある変化が起きています。

依存症の脳の仕組みを理解するには、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不可欠です。ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生き物は快楽や喜びを感じることができるのですが、ギャンブルを行うことでもドーパミンは分泌されます。つまり、ギャンブルが習慣化すればするほどドーパミンが分泌される頻度も増え、快楽や喜びを感じやすくなります。

これだけ聞けば良いことだと思うかもしれませんが、恐ろしいのは神経伝達物質は有限なものであるということです。永遠に分泌され続けることはなく、すぐに枯渇します。すると、それまでの強烈な快楽が得られなくなるためにさらにギャンブル行為は促進され、ドーパミンは枯渇し、むしろ焦りや不安、退屈感といった不快体験が増えていく…という悪循環に陥ります。このレベルにまで達すると脳は快楽だけを求めて体に指示を出すため、簡単には抗えません。

このような経過を経て、「やってはいけないとわかっているんだけどやめられない」という依存が形成されます。

② ギャンブル依存症になる原因は?

ギャンブル依存症は複数の要因が絡み合って発症に至るため、これが原因であると明確に述べることはできません。とはいえ、発症リスクを高める危険因子として認められているものはいくつかあります。

  • 幼少期や青年期のギャンブル体験
  • 遺伝と家庭環境(親がギャンブル依存症であること)
  • うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害など他の精神疾患を合併していること
  • ギャンブルを始めた初期に大勝ちした経験がある、ギャンブルにアクセスしやすいなどの環境

上記を満たすことで必ずしもギャンブル依存症を発症するとは限りませんが、その可能性は高くなるといわれています。

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症とは、ギャンブルをくり返し行うことでだんだんと賭ける金額や行う頻度をコントロールすることが難しくなり、やがて経済面や社会面で有害な結果が生じ、それにも関わらず自分でギャンブルを止めることができないという病気です。年齢、性別、職業など関係なく、誰でもなる可能性があります。

ギャンブル依存症はギャンブル障害、病的賭博とも呼ばれ、DSM-5(アメリカ精神医学会作成の心の病気に関する診断基準)では以下のように定められています。ここでいう賭博にはパチンコやスロットからカジノまで多岐に渡る種類が含まれておりますが、最近では株やFXに関する相談も増えてきています。

ギャンブル依存症の原因・発症の要因

DSM-5 診断基準

  • 1時間だけ楽しもうと思っていたのに、気が付くと半日経っている
  • 「もう1回やれば当たりがくるはず」と何度も挑戦してしまう
  • 終業時間が近づくとパチンコがしたくて落ち着かない
  • ギャンブルで失ったお金はギャンブルで手っ取り早く取り戻したい
  • 財布のお金が無くなると、わざわざ銀行やATMまでお金をおろしに行く
  • 身内や知人から嘘をついてまでお金を借りる
  • パートナーから離婚話を持ち掛けられてもギャンブルを続けてしまう
  • この先のお金のやりくりのことが心配になり、仕事や日々の活動に手が付かないときがある。
  • 絶望的な気分になり死ぬことを考えることがある

なお、ギャンブルといえば男性というイメージが強いですが、最近は女性のギャンブル依存症も増えてきています。昔と違い、たとえば競馬であれば会場まで行かなくてもスマートフォンで馬券を購入しレースを観戦することができ、誰でも手軽に行える環境になっていることも要因の1つでしょう。

病院に受診するレベルの症状なのか、自分がギャンブル依存症なのかどうかなど、ご自身の状態が気になるという方はギャンブル依存症セルフチェックをどうぞ。基準点以上であれば、一度専門医に相談した方が良いかもしれません。お気軽にご相談ください。

ギャンブル依存症 治療プログラム

ギャンブル依存症と言ってもその病態は様々です。軽症であればまだ借金はしません。しかし家のお金を勝手に持っていく、友人や親からお金を借りるなどしてギャンブルを続けようとします。この状態が悪化すれば、カードローンから始めて消費者金融、さらには闇金にまで手を出し、借金を返済するためにまた借金をするようになります。中には自己破産する方、窃盗した盗品を換金する方、会社のお金を横領する方もいます。これで済めばまだ良いかもしれません。重症化したギャンブル依存症の末路として、経済的なひっ迫が続き精神的に追い詰められ、最終的に自殺という手段を選ぶ方もいます。

ギャンブル依存症の原因・発症の要因

問題が悪化する前に、対策を立てる必要があります。ギャンブル依存症は意思の問題ではありません。原因の一つは、過去の成功体験です。ギャンブルをすることで得られた快感を脳が覚えてしまったのです。この病気を克服するためには、ギャンブルから離れた生活を習慣化させる必要があります。

当院は入院設備を持たないため、外来通院での治療となります。ギャンブル依存症の治療で一般的なものは集団精神療法ですが、そのときの精神状態によっては薬物療法も行います。

1、集団精神療法

同じようにギャンブルによる問題を抱えている他の患者さまと一緒にこれまでの生活を振り返り、これからの健全な生活の送り方について考えます。他者の話を聞くことで一人じゃないという安心感や自分も回復できるんだという自信を得ることができます。なお、こういった集まりは医療機関に限らず、GAという自助グループでも行われています。各地域にありますので検索してみると良いでしょう。

2、集団認知行動療法

認知行動療法に基づいたテキストを使っています。ギャンブルの引き金を検討し対処行動を考える、今後の目標とそのために自分ができる行動を具体的に考えるといった内容で構成されています。具体的に自分の思考や行動について検討できるため、回復に役立つ効果が期待できます。

3、薬物療法

ギャンブル依存症の方はお金の返済のことで頭の中がいっぱいです。焦りや不安、落ち込みが生じやすく、思考が狭くなると「もう死ぬしかない」と考え、実際に自殺という手段を取ってしまう方もしばしばいます。そのため、診察時には医師が精神状態をチェックし、投薬が必要な状態であれば患者さまの希望を伺った上で抗不安薬や睡眠導入剤など処方することがあります。

ギャンブル依存症 体験談

30代 男性

私が初めてパチンコをしたのは18才の時でした。バイトの収入の範囲内で1~2年は楽しめていたのですが、20才になると消費者金融で借金をしてまで毎日パチンコに通うようになりました。初めて借りる時はドキドキしましたが、あっさりと借りられ、借りることにもすぐに慣れてしまいました。負けるとその金を取り戻そうと更にお金をつぎ込み、勝っても次のギャンブルの資金となり、結局は借金ばかりが増えていく…。30才の頃には数社から借り入れをし、自分でもいくら借金があるのかわからない状態でした。 ついには家族に借金がばれて治療を勧められ、大石クリニックを受診することになりました。 病的賭博と診断され、もう嘘をつき続ける日々・借金返済について悩む日々を続けなくていいんだ…とほっとしたのを覚えています。 週に一度、大石クリニックの夜のギャンブルミーティングへ通うこととなりました。借金返済もあるため、仕事をしながら治療を受けることができるのは大変助かりました。 それから2年が経ちますが、今でも大石クリニックのミーティングに通うことで、ギャンブルをしない日々を送ることができています。今後もミーティングへの参加を続け、平穏な日々を過ごしたいと思っています。

60代 男性(家族より)

夫は、いつからまた競馬をしていたのか…。夫から告白されるまで、全く気付きませんでした。 夫は40才頃から会社でのストレスが増え、土日は仕事と偽っては毎週競馬に通っていたようです。自費での接待や出張費用など、今思えば怪しい部分も多くありましたが、言われるままに夫にお金を渡していました。60才で定年退職した際に、夫からギャンブルでの借金があると告白を受け、退職金でも足りず貯蓄を崩して返済へとあてました。もう二度と競馬はしないと約束し、本人も懲りていると思っていたのですが、数ヶ月後にはまた競馬を始めていました。

半年で再度借金を作った夫に愛想をつかし、当時は会話をしたくもなかったのですが、大石クリニックに通院して1年、夫は定期的にミーティングに通い、私も家族教室へ通って家族の対応を勉強しています。夫との会話も増え、一緒に過ごす時間が楽しいと思えるようにもなりました。また競馬をしているのでは?と、たまに不安になることもありますが、夫を信じて自分の生活を大事にしていきたいと思っています。

20代 男性

高校卒業の時、先輩に誘われパチスロに行きました。ビギナーズラックで1万円が5万円となり、「こんなに簡単に儲かるものなんだ…」「自分にはギャンブルの才能があるに違いない」と思い、毎日パチスロに通うようになるまでそう時間はかかりませんでした。親には大学に行くと言い、資金作りのバイトとパチスロの毎日…。負けが続き資金がなくなると、親の財布から金を抜き、友達からも借金をしました。それでも「自分には才能がある」「いつか大勝して借金を返せる」「何とかなる」と、根拠なく信じていました。社会人になるとカードで借金をするようになり、返済ができなくなると親に泣きつき、何度も立て替えてもらいました。自分で病気ではないかとネットを調べ、大石クリニックを見つけました。仕事が休みの土曜日にミーティングに通うこととなり、仕事にも影響なく更に週末の空いた時間をミーティングにあてることで土日を乗り切ることができています。 大石クリニックの先輩患者から借金整理のしかたを教えてもらい、自分で債務整理をしました。 手間はかかりましたが、よい社会勉強になりました。また払い過ぎていた分を取り戻しました。夜なべでやっているその姿を見て、妻も信用を取り戻してくれたようです。

ギャンブル依存症 家族相談

依存症は否認の病気とも呼ばれ、本人が問題を自覚していないこともあります。その場合、途方に暮れるのは一番近くにいる家族です。そのため、当院では父親や母親、子供の依存症の問題で困っているご家族を対象としたギャンブル依存症の家族相談を行っております。本人がいないのに家族だけで受診して意味があるのかと疑問に思うかもしれませんが、依存症という病気には十分意味があります。実は家族が良かれと思って行っている行動の中には、本人のギャンブル行動に拍車をかけてしまうものがあるのです。

例えば、こんなことをしていませんか?

  • お金を貸してほしいと頼まれると、「かわいそうだから…」「犯罪でもしたら困るから…」とお金を貸す。
  • 帰りが遅いと「どこにいるの?」と連絡する
  • 督促状を本人よりも先に確認して「またやったの?」と問い詰める
  • 「もうしないって約束したのにまたやるなんて、嘘をついたのね」と責める

ギャンブル依存症の原因・発症の要因

上記の行動は「イネ―ブリング、世話焼き」「直面化」と言われています。こういった行動を家族が続けているうちは本人がギャンブル問題を認めて治療を受けることは不可能です。むしろギャンブルしていることを隠そうとして嘘をつく、会話を避ける、言い合いになるなど関係性は悪化の一途を辿ります。治療の提案をするどころではありません。しかし、家族が適切な対応を身につけることができれば、本人との信頼関係を築きなおし、問題と向き合うためのサポートをしていくことができます。

ギャンブルについてオープンに話し合える良好な関係性ができて初めて、本人を治療につなげるチャンスも出てきます。ギャンブル依存症者のご家族には以下のプログラムの参加をお勧めしています。

なお、物理的にお金を借りれなくする方法もあります。「貸付自粛制度」と呼ばれる制度であり、これに登録してから5年間は金融会社、銀行、クレジットカード会社からお金を借りることができなくなります。ただし、申し込みはご本人が行う必要があります。

ギャンブル依存症

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